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「_では、俺達も始めましょうか」
「よろしくお願いします」
取って来たファイルを机の上に置きながら、旭南君の隣に座る。
昨日の事で、俺達の仲は緩和されたとはいえ、まだぎこちない空気が流れながらも、お互いに勉強を開始した。
「何か分からない所があれば、質問して下さいね」
「はい」
「授業の復習とかから始めるのでしょうけど、去年の問題などはここにあるファイルの中にあるので、後で模擬テストでもしましょうか」
「ありがとうございます」
そうは言ったものの、彼は頭が良い。何事もなく復習に取り組み、時間は淡々と過ぎて行く…と思いきや、
「先輩、ここの問題なんですけど…」
「あぁ、それは、そこの計算で出た答えを、この式のxに代入して__って感じで解いてみて下さい」
意外と定期的に質問をしてくれる。しかも、教えたらちゃんと吸収してくれるので、教え甲斐があった。
「…こうですか?」
「そうです。この解き方は、そこの3番目と5・6番目の問題でも使えるので、そのやり方で解くと楽ですよ」
「ありがとうございます」
いつの間にか、質問をされていると普通に受け答えが出来ていて、気まずさを感じなくなっていた。
_これが浦崎先輩の策略であったのなら、認めたくはないが今回は感謝すべきなのだろう。…認めたくはないが。
「先輩、この教科の範囲復習が終わったので、テストしてみても良いですか?」
「わかりました」
俺はファイルから問題用紙を取り出し、旭南君の前に裏側にして置いた。
「これから50分間時間を計りますので、合図をしたら…そうですね、この紙に解答を記入して下さい」
そういって、俺は自分のルーズリーフを問題用紙の上に置いた。
「わかりました」
「では、始めて下さい」
そう声をかけると、旭南君は紙を表にして、解き始めた。
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