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「あー、先輩のせいで髪の毛ぐっしゃぐしゃ」
「嘘ついた仕返しって所だな」
ぐしゃぐしゃになった髪を手で梳かしながら文句を言ったが、先輩の仕返しという言葉に、俺は何も言えなくなった。
反論せずに俯いていると、肩をグッと引かれて思わず顔を上げる。
「悪い、別に責めてるわけじゃないんだ。まぁ、言いたくないんならいいけど、そんなに気になってたって事は旭南と何かあったんじゃないか、って思っただけだからな」
別に責められたとは思っていないが、何となくフォローされて、
「いや、何かあったとかそういう訳ではないし、むしろ昨日から段々と良い方向に向かっていますけど。ただ、何というか、勉強会で旭南君の頭の良さを見せつけられて複雑…というか、負けてられないというか…」
非常に不本意だが、先程嘘をついた(ことになった←まだ勉強に集中していたと言い張るからな?!)事に、少しの罪悪感を覚えていた事もあって、質問に正直に答えた。
…すると、先輩は大きく息を吐き出した。
「はぁー、なんだそんな事か。いや、まぁ八多喜はそういう奴だよな。目先の事しか考えられないというか、何というか」
「え、何で俺が貶される流れになっているんですか」
心配して損したと呟く先輩に、俺は不服そうな顔をする。
「とりあえず、何も無いなら良かったよ」
スルーされた。普通にスルーされた。
正直に言った結果が貶されるってどういう事だよ。
「_それで、旭南の成績とかは意識してるのに、何で俺はそういう対象に入んねーの?」
「別に意識している訳では無いです。ただ…何というか、学年は違いますけど、会長と副会長で成績の差が出来てしまって、生徒から比べられてしまうのが癪なだけです」
別に勝負している訳ではないし、俺の個人的な問題だ。…まぁ、負けるつもりも無いのだけれど。
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