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質問→解説→解き直し、の順で勉強をしていたら、あっという間に時間が過ぎてしまった。
「おーっし、今日はここまで!」
「ありがとうこざいました」
勉強を止めて先輩に礼を告げると、「どういたしまして」と返ってきた。
もう少し残っていくと言う永山と芹川と軽く言葉を交わしてから、浦崎先輩と生徒会室を出た。
「どーだった?俺の教え方は」
「どうだったかって…普通にわかりやすかったですけど」
「そうだろー?」
「というか去年も教えてもらっていたじゃないですか。何で今更…」
何故そんな事を聞くんだ?と不思議に思いながら先輩を見る。
「どうも八多喜は俺を下に見るきらいがあるからな。ここらで良い所を見せないと」
「下に見てなんかないですよ」
「いーや、去年の今頃だったらもっと慕ってくれていた!」
「去年…あぁ、俺がまだ先輩に夢見てた時の事ですか」
「あの時は『先輩、先輩!』って感じだったのに、今じゃこの反応…」
「…理想って簡単に壊れますよね」
俺かそう呟くと先輩は驚いたような表情をする。
「え、それって最初は俺が理想だったって事か?」
「?!え、いやちがっ…」
「ふーん。…でも今は俺じゃなくて旭南が理想だもんなー」
「理想じゃないです」
それは絶対にありえないと即答する。
「でも、旭南ばっか気にして追いかけてるだろ?」
「追いかけてなんかいませんよ!俺はストーカーか何かですか?!」
「ただの比喩だよ。それくらい分かるだろ」
「先輩が言うと比喩っぽく感じないんですよ。すぐに茶化したりするその性格さえ直れば、先輩は俺の理想のままだったのに」
「…」
『やっぱり俺が理想なんじゃないかー』なんて揶揄いの言葉が返ってくると思っていた俺は、突然黙った先輩に困惑する。
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