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「蒼井颯人です」
数秒の静けさに耐えられずに目線を上げると、ミルクティー色に髪を染めた女子と目が合ってしまった。
「はーい質問。蒼井くんは彼女いますか?」
その質問を皮切りに、女子が矢継ぎ早に質問を投げかける。
「うるせーな。そんなに転入生が珍しいのかよ」
「蒼井くんの制服見ればわかるでしょ。イケメン男子高生の殿堂、赤学だよ。あんたたち底辺とは違うし」
男子と女子の言い合いが始まり、クラス中に罵声が飛び交う。またこの感じだ。今回もまた俺は……
「静かにして」
ひとりの女子が表情ひとつ変えずに一喝した。
「学級委員さまが怒りだす前におまえらも静かにしとけよ」
茶化すようにその女子の斜め後ろの席の男子が言った。
「洸夜も怒られたくなかったら黙って」と女子が言うと、はいはいとおちゃらけたように男子が笑った。
ふたりのお陰で助かったと、ほっと胸を撫で下ろした。
「先生。わたしの隣の席が空いているので蒼井くんの席はここでよろしいですか?」
「吉沢の隣で面倒見てもらえ」
先生が吉沢と言った、女子の隣の席についた。
「あおはやモテすぎだな」
あおはや?俺の後ろの席の男子が話しかけてきた。
「たぶんその制服だな。よし制服交換するか」
人懐っこい笑顔を俺に向ける。
「制服じゃなくて顔の問題じゃない」
「あほだな美紅は!俺がどんだけ人気があるか知らないだろ」
「知らない」
夫婦漫才のようなやり取りに、少し笑ってしまった。
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