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君は正義のヒロイン後編
俺が学校に来てから1ヶ月が過ぎようとしていた。真新しいこの学校の制服にもそろそろなれてきた。洸夜は俺の学ランをたまには貸してくれと言うけど、絶対に貸さないと俺は頑なに断っている。
その会話を聞いて吉沢さんが不安そうな、せつなそうな顔をしたからだ……
相変わらず洸夜と吉沢さんとつるんでいるけど、俺の中に気持ちの変化がうまれた。あのパンケーキ屋から俺の吉沢さんに対する気持ちが、少しずつ変わっていることに気づいてしまった。でも見てみぬふりをしている。
たぶん吉沢さんは洸夜が好きだ。もちろん洸夜も。俺はふたりの気持ちも、見てみぬふりをしなくてはいけない。どこまで持つかな……俺の気持ちは……
「もう冬だな。屋上は限界か」
洸夜がホットのブラックコーヒーをカイロがわりにして呟いた。
「そうだね。でも教室だと颯人くんが女子に囲まれちゃうから大変だしね」
俺は吉沢さんの言葉に苦笑いする。
もうひとつ、1ヶ月で変わったことといえば吉沢さんが俺を名前で呼んでくれるようになったことだ。
吉沢さんが俺を初めて「颯人くん」と呼んだ時は洸夜も俺も驚いた。洸夜なんてなんで下の名前で呼ぶんだと、嫉妬しているようにも見えたけど、吉沢さんは笑いながらわたしの中でいちばん仲がいい男友達だからと言った。
いちばん仲がいい男友達……
俺は複雑な気持ちで受け入れた。洸夜はその言葉をどことなく嬉しそうに聞いたあと「でもあおはやは美紅って呼ぶなよ。美紅って言っていいのは俺だけだからな」と告白じみた発言をした。その言葉に顔を赤くしながらも嬉しそうな吉沢さん。
洸夜の言動や行動ひとつひとつに反応する吉沢さんを見て嫉妬しながらもそんな彼女を愛しいとも思ってしまう自分は相当重症なのかもしれない。
美紅とも呼べない彼女に俺はどんどん惹かれているんだ……
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