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「しかしモテるくせにあおはや彼女いないとかおかしいよな。女が苦手なのか?」
「そうかもしれないな」
ふたりには前の学校で起きた出来事を話したくもないし、知られたくもない。無難に高校生活をただ送って終わらせたい。
「もしかして俺のこと好きだろ」
洸夜が俺の顎を掴んで顎クイをしてみせた。
「もちろん好きだよ」
俺もおどけて洸夜に合わせて答えた。
「だと思った。早く言えよ」
俺たちのくだらないやり取りを微笑ましく見守る吉沢さんが寒さで震えているのが見えた。俺はブレザーを脱いで渡そうとしたら洸夜が吉沢さんに抱きついた。
「なんだよ。俺らのボーイズラブに震えたか」
「洸夜キモい!」
冗談を言って洸夜は抱きついたけど、吉沢さんが寒さで震えているのを見つけて、温めにいったのだと気づいてしまった。俺は脱げかけのブレザーを整えて、ボタンを閉めながらふたりを見守る。
「暑いから離れてよ」と吉沢さんは勢いよく洸夜をどかす。近づかないでといいながら、洸夜のぬくもりを感じた自分の腕を大切そうに掴んで微笑むのを俺は見逃さなかった。
その瞬間、やはり俺はこのふたりの間に入ることができないと確信した。
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