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昼休みを終えて教室に戻ると異様な静けさが漂っていた。冷たい視線にこそこそと話す集団。
この感じ俺は知っている。
「みんなどうしたの?」
「ちょっと美紅、あいつに何かされなかった?」
「あいつ?」
吉沢さんが女子の集団に腕を捕まれて引っ張られていった。
「みんなどうしたんだよ?」
洸夜も困惑しながら聞いても誰も口を開こうとしなかった。
まさか……あのことがバレたのでは?暑くもないのに額から流れる汗と同時に背筋が凍る。
「颯人っちが前の学校で問題起こしていられなくなったからうちみたいな学校に来たんでしょ?」
「そんなことありえないよ。そうでしょ?」
吉沢さんの真っ直ぐな目を直視することができなかった。
ごめん……本当なんだよ。
「赤学のゆうくんの彼女に颯人っちが手を出したんでしょ。バレたらあっさり捨ててその子ショックで病院通いだってさ。最低だね」
「蒼井ならやりそうだよな」
ふたりに知られたくなかった。あれは真実じゃない。でも前の学校のやつは誰も信じてくれなかった。
「あおはや……嘘なら嘘だって言えよ!」
今さらこの事に反論するつもりはないから俺は黙って耐えた。ざわざわとした教室の中、俺の周りだけが無音になる。
また同じだ……あの時と同じ光景だ。
早く忘れ去りたい過去がフラッシュバックする。
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