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「湊、温泉でも行かないか?」
「……」
「海外とか、アクティブな旅は行くだろ?」
「……」
あの時は果たせなかった。本気で言ってくれてたんだな。
温泉なんて、不倫の聖地じゃないか。
※湊の偏見です。
「取るから。休みも宿も。移動に時間かけたくないから、近場ね」
「遠くが定番じゃないの?誰にも会わない」
……つい、言ってしまった言葉に
彼が苛立つのが分かった。冗談でその場に倒される。
「……まだ言う?」
「……ごめんなさい」
嬉しいんだよ。本当は。
でも、上がって、また落とされるのが……つらい。
じんわりとまた涙が出そうになった。
そんな私の頬にそっとキスをくれる。
優しいキスを。
この人は……そんな人じゃない。
「行きたくないのか?」
「忙しいの知ってるもん」
「行きたくないのか、聞いてる」
「……行きたい」
「ん、予約する」
……信じてないわけじゃないんだけどな……
「何、食べたい?」
「出世……舟盛りとか?」
出世魚……未だ、目指せ、大きい魚。
清水部長の浴衣。社員旅行で接待されてそう!ホステスさん、呼んでそう!
「それも含めて、楽しみ」
ある意味、似合う。
「そうだな」
そう言うと、私を抱き寄せる。
「泣き虫」
「……だってさ。笑わすんだもの」
「露天風呂付きの部屋ね」
「うわー……」
それって、とってもアダルト。
「あんなこと、こんなこと、しような」
抱き締めて耳元で言ってくる。
あっちこちに口付けながら……。
その日、清水部長は身体中にキスの雨を降らせただ、抱き締めくれた。
……別に、いいんだよ。しても。私、だけなら。
まぁ、でも……ただ抱きしめられて眠る。
いいか、こんな日も。
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