第4話 side S

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「お、君の方か」 年明け、今月から彼か、彼女かどちらかが来る。 「すみません。新年1発目が僕で。明けましておめでとうございます。今年も、宜しくお願い致します」 丁寧に頭を下げる彼に、挨拶を返す。 「……今日ってさ……どうやって決めたの?」 わざと、聞いた。うちに来るのが、彼か、それとも彼女か。 「私情は挟んでませんよ。兼ね合いというか……」 「ふっ、だろうね」 「もう、色々バレてるだろうから言ってしまいますけど……僕に権限はありませんよ。公私ともに」 さすが、勘がいい事で。 「指輪(それは)? 何で?」 彼の左手の薬指からは、いつもあった物が消えていた。 「色々理由ありますけど、前向きな理由を挙げると。治そうと思って」 前向き……つまり……彼女か。 「君みたいな、綺麗な男が復帰するとなると……(こっち)は脅威だし、(あっち)は……色めき立つよね」 「何言ってんですか……社内一のモテ男が」 「えー、うちの社にもモテてんでしょ? 君」 「清水部長(そっち)が相手しないから社外(こっち)に流れてくるんですよ」 「相手、して欲しいの? なら、部屋あそこ取ろうか?」 そう言って笑って親指で指した方向には それなりのランクのホテルがある。 「あー、僕そっちはハジメテなんでお手柔らかに」 「はっ! マジで!? 意外だなぁ。新年早々こんな美人がOKしてくれるとはね」 そこも乗ってくれるんだな。 まぁ、男でもよろめく程の美人だ。 「何ですか? 新年早々そのバンコランなジョーク」 バンコラン……この微妙に古い、美少年好きのネーミングも……俺に合わせてるのだろうか……。そんな、歳上でもないんだが。 「美少年の自覚はあるんだ?」 「もう、少年の歳じゃないですけど……美しいのは否定せずにいます」 そう言って生意気そうな顔で笑った。 うーん……少年でもいけそうだけどね。 しかし、可愛いな。 バンコランにでもなれそうだな、俺。
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