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「今日で2人で来るのは最後です。後は各々フォローさせて頂きます」
そう言った吉良君に
「おー、それ、指名できんの?」
「……できませんよ」
「残念」
そう言って笑った。
「2人揃ってるとなかなかの美男美女だから……それも楽しめたのになぁ」
「見劣りします、彼と並んだら」
彼女の言葉に
ああ、そういう事か……。
「まさか。お似合いだよ。……妬けるくらいね」
俺の言葉に彼女は俯いた。
「これから、2人は? イヴデート?」
「オフィス事務処理デートです」
吉良君がサラリとかわす。
「2人が、オフィスも何かエロいよね。どっちも顔がエロいし」
「ちょ、顔がエロいは止めて下さい」
「何だろうなー……妙にエロい」
「清水さん!」
中条さんがクールさを取っ払って赤くなる。可愛いねぇ。この感じ。
「他にもいますよ、会社。2人きりじゃない」
吉良君は淡々と話す。あえて、だろう。
「おー、長らく行ってないなぁ、そっち。……佳子ちゃん元気?」
「あー、元気ですよ」
「へー……そろそろ結婚してるんじゃないの?」
「……まだ、です」
「……彼女も、可愛いからね」
彼女“も”ね。
──そこで彼らと別れてから
後ろから二人を追いかけるように、ビルを出た。
「あれ、何かありました?」
「眠気覚まし、コーヒー買いに行くわ。缶コーヒー苦手で」
「ああ、なるほど」
「うーん……スカートもいいね」
珍しい。彼と、出かけるからか?
「……あ、セクハラか。アラフォーが若い子に言ったら駄目だね」
この前の、会話の延長
「……もう、それ……止めて下さい」
彼女は、俺の目を見た。でも、5秒経つ前に逸らす。
「……それも……止めて欲しいけどなぁ」
彼女が笑う。随分、表情が出てきたもんだ。
逆に、こっちは……表情には出さない。
うーん……可愛い。
可愛いんだよな、吉良君も。
同じ会社だ。
いくらでも機会はあるだろう。
それなのに……環境が整ってるっていうのに、駄目なのか。
問題は彼の方、か。むしろ、それだけか。
せっかくのイヴなのにね。
……俺も……か。
放っといて自分の事、考えたらいいのに。
癖だな。損な性分だな。
二人の妙に距離の開いた後ろ姿を見ながらそんな事を思った。
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