第4話 side S

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──── 「今日で2人で来るのは最後です。後は各々フォローさせて頂きます」 そう言った吉良君に 「おー、それ、指名できんの?」 「……できませんよ」 「残念」 そう言って笑った。 「2人揃ってるとなかなかの美男美女だから……それも楽しめたのになぁ」 「見劣りします、彼と並んだら」 彼女の言葉に ああ、そういう事か……。 「まさか。お似合いだよ。……妬けるくらいね」 俺の言葉に彼女は俯いた。 「これから、2人は? イヴデート?」 「オフィス事務処理デートです」 吉良君がサラリとかわす。 「2人が、オフィスも何かエロいよね。どっちも顔がエロいし」 「ちょ、顔がエロいは止めて下さい」 「何だろうなー……妙にエロい」 「清水さん!」 中条さんがクールさを取っ払って赤くなる。可愛いねぇ。この感じ。 「他にもいますよ、会社。2人きりじゃない」 吉良君は淡々と話す。あえて、だろう。 「おー、長らく行ってないなぁ、そっち。……佳子ちゃん元気?」 「あー、元気ですよ」 「へー……そろそろ結婚してるんじゃないの?」 「……まだ、です」 「……彼女も、可愛いからね」 彼女“も”ね。 ──そこで彼らと別れてから 後ろから二人を追いかけるように、ビルを出た。 「あれ、何かありました?」 「眠気覚まし、コーヒー買いに行くわ。缶コーヒー苦手で」 「ああ、なるほど」 「うーん……スカートもいいね」 珍しい。彼と、出かけるからか? 「……あ、セクハラか。が若い子に言ったら駄目だね」 この前の、会話の延長 「……もう、それ……止めて下さい」 彼女は、俺の目を見た。でも、5秒経つ前に逸らす。 「……それも……止めて欲しいけどなぁ」 彼女が笑う。随分、表情が出てきたもんだ。 逆に、こっちは……表情には出さない。 うーん……可愛い。 可愛いんだよな、吉良君も。 同じ会社だ。 いくらでも機会はあるだろう。 それなのに……環境が整ってるっていうのに、駄目なのか。 問題は彼の方、か。むしろ、それだけか。 せっかくのイヴなのにね。 ……俺も……か。 放っといて自分の事、考えたらいいのに。 癖だな。損な性分だな。 二人の妙に距離の開いた後ろ姿を見ながらそんな事を思った。
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