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「あの演奏は別格だったわ・・・今でも忘れられない。心臓掴まれたみたいだった。めちゃくちゃに優しくて・・・切なくて。時々、目ェ閉じて弾くんだよね。それが崇高にすら見えたし・・・。でね。そこからがクロミのクロミらしい所なんだけど、イマジンブーム来たんですよ。お昼の放送で流れまくったわ。ところがそのブーム作った張本人は気付いてないの!クロミが弾いたからだよって言ってんのに信じないし」 「・・・・・・それって、天然?」 「そこが謎だからまた腹立つんだよね。でも自分が何かやると人にすごい影響するって、薄々分かってるからこそ人前に出ないのかもしれない。おまけにそこから二人の男子にコクられてたわ・・・私なんて去年までコクられた事すらないっての!合唱でも先生に指名されて私とクロミがハモりの手本やらされたけど、その時に、何もアピールして来なかったクロミが何で指名を?って、私は驚いたのよ。おまけにふざけて練習もしないし。それが土壇場に来たら完璧にキメるしさ、もう、真面目にやってる方からしたら馬鹿にされてる気持ちよ。これで性格でも悪ければイヤな女!って嫌いになれるのに・・・あんな子、どうやったら嫌いになれる?私はずっと・・・言いたくなかったけど、もうずっと、あの子が目標だったの。今でも、クロミに褒めてほしくて歌ってる。そういう・・・そういうね、爆弾みたいに人を惹くヤツが初めて隠さずに本気出してるんだから、その相手になってる拓真君がまともにいられるワケないのよ」 ・・・いつしか熱くなった目頭を抑えながら 鈴さんはビールを一気に呷った。
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