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俺が想像したよりずっと深い
二人の繋がりの中に、
七瀬さんの優しくて穏やかな精神が
大河のように流れているのが分かった。
きっと、
鈴さんと俺は似ているのだ。
不器用で、刺があって、すぐにグラついて。
そんなだから
同じ人に対してここまで惹かれて
隙を見せてしまっているのか・・・
「・・・・・・鈴さん。美人なのにモテないって、辛いでしょ」
「・・・・・・腹立つ。頭の回転いやに早いわね」
鼻をズズッと啜りながら
お絞りで涙をふく。
化粧が落ちて
目の回りが黒くなっていた。
「似てますよ、俺もモテないんで。無理に頑張って完璧に見せて足場固めて・・・それが、瞬時に崩れた。初めてお会いした時にチョコレート貰って、俺、めっちゃ感激した顔してたらしくて・・・そこからもう、七瀬さんの前ではプライドなんて意味為さなくなってます。でもガラガラに崩れた残滓に、あの人は入ってきたんですよ・・・その残滓に触れて、それを渾身の歌詞にしてくれて・・・ただ音楽的な相方を求めてただけなのに、身ぐるみ剥がさないと本当に納得できる音楽が作れないのが分かって・・・正直、線引きできなくなってきてる。音楽以上を求め始めると、それこそ、おしまいだってのに・・・」
何を言ってるのか、俺は。
とりとめもなく出てくる言葉の中に
いくつもの本音。
そうだ。
それ以上を求めるなら、
やめるべきなのだ。
俺は守田のように
熱を抱いたまますぐ近くで
彼女の幸福を見守るなんて
絶対にできない。
ところが
例え七瀬さんが独身だったとしても、
音楽という濁りのない目標のためには
今と同じこの距離を
死守していかなければいけないのだ。
何なんだ、この矛盾は。
どう転んだって地獄じゃないかーーー。
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