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「すみません、お忙しいのに手を煩わせて。もし引き受けて下さったら俺の番号を伝えて下さいとお願いしてました」
「部屋探しでしょう?いつもやってる仕事だから問題ないわ。それより、クロミ心配してましたよ。家族仲すこぶる悪いのかしら、って」
「あ・・・いや、たまたま妹が進学するタイミングで親が色々決めてただけで・・・」
「ふうん。偉いと思うけどね。私なんて大学で親元出たけど、気遣う気持ちはあっても一緒に暮らすなんてムリだわ。同居してたら普通、バンドなんてできないし、理解ある親御さんだと思いますよ」
「そう・・・ですね」
なんだか会話がしっくり来ない。
柔らかいのに、
なぜか、何となく、
鋭利な雰囲気を感じさせる人だ。
とりあえず、
鈴さんの会社に行って
候補物件の資料をもらう事になり、
俺はその週の土曜日に
隣の街にある
大通りのオフィスを訪ねた。
「お待ちしてました」
一つに束ねた黒髪を
右肩から前に流した綺麗なお姉さん。
鈴さんはステージで見る姿と
普段の印象が
あまり違わない人だった。
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