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思ったよりも会話はスムーズで、
主に鈴さんが
俺のルーツや本の知識などを
聞いて求めた。
俺はここぞとばかりに
七瀬さんの事を聞いてみた。
表向きは鈴さんへの質問だ。
しかしその真意は
この人から見た七瀬さんの側面を
もっと知りたいからだった。
「ナル先輩が言ってたんですけど、鈴さんは七瀬さんが本気出したら敵わないと思ってると・・・。なぜそう感じるんですか?どう見ても歌唱力は鈴さんが上だし、完成されてるのに」
こんな風に。
鈴さんはニコリともせず
クールな眼差しで言葉を紡いだ。
決して気を悪くした訳ではなく
もともと不必要に笑顔を作らない人だった。
「ただの、ないものねだり。カリスマ性って言われるものがあるでしょ。それをクロミは持ってて。ボーカルには一番必要なものじゃない?私は努力して、練習して、やっと多少は人に見て貰えるようになったのに・・・もしクロミが本気でボーカルやり出したら秘密兵器を隠してるようなものだから。努力でできてる優等生なんてあっという間に追い抜かれますよ」
「・・・・・・そんなに強い、カリスマ性が?」
「まだ分からないかもね。あの子が自分の強みだと思ってるデスボとかシャウトなんて、ここ2年位で身につけただけの小さい部分でしかないの。確かにそれがきっかけで声帯が目覚めて、やっと理想に近い歌い方ができるようになったんだろうけど、本当に怖いのはカリスマ性だから。おまけに、すごい複雑な感受性もあって、一つ曲を聴くと、私なら日本海の底までしか見えないのに、深海の真っ暗な海底まで掴んで来るんですよ。そういう理解力があるからこそ表現力は抜群で、おまけに突飛な技術まで身に付けて、更にもし眠ってるカリスマ性にまで気付かれたら、もう私が勝てる要素は一つもない」
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