5/15

2人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
思ったよりも会話はスムーズで、 主に鈴さんが 俺のルーツや本の知識などを 聞いて求めた。 俺はここぞとばかりに 七瀬さんの事を聞いてみた。 表向きは鈴さんへの質問だ。 しかしその真意は この人から見た七瀬さんの側面を もっと知りたいからだった。 「ナル先輩が言ってたんですけど、鈴さんは七瀬さんが本気出したら敵わないと思ってると・・・。なぜそう感じるんですか?どう見ても歌唱力は鈴さんが上だし、完成されてるのに」 こんな風に。 鈴さんはニコリともせず クールな眼差しで言葉を紡いだ。 決して気を悪くした訳ではなく もともと不必要に笑顔を作らない人だった。 「ただの、ないものねだり。カリスマ性って言われるものがあるでしょ。それをクロミは持ってて。ボーカルには一番必要なものじゃない?私は努力して、練習して、やっと多少は人に見て貰えるようになったのに・・・もしクロミが本気でボーカルやり出したら秘密兵器を隠してるようなものだから。努力でできてる優等生なんてあっという間に追い抜かれますよ」 「・・・・・・そんなに強い、カリスマ性が?」 「まだ分からないかもね。あの子が自分の強みだと思ってるデスボとかシャウトなんて、ここ2年位で身につけただけの小さい部分でしかないの。確かにそれがきっかけで声帯が目覚めて、やっと理想に近い歌い方ができるようになったんだろうけど、本当に怖いのはカリスマ性だから。おまけに、すごい複雑な感受性もあって、一つ曲を聴くと、私なら日本海の底までしか見えないのに、深海の真っ暗な海底まで掴んで来るんですよ。そういう理解力があるからこそ表現力は抜群で、おまけに突飛な技術まで身に付けて、更にもし眠ってるカリスマ性にまで気付かれたら、もう私が勝てる要素は一つもない」
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加