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聞けば鈴さんは バンドという世界については 俺なんかよりずっと先輩で、 10個以上のバンドを経験していた。 ライブまで漕ぎ着けたバンドもあれば 練習を重ねるだけに終わったもの、 コピーしかしない練習バンドや、 けんか別れしたバンドも、 メンバーが常に変わるバンドも、 沢山の経験の中で 最良の相方を見付ける事こそが 自分の方向を安定させる秘訣だと 身をもって知っていた。 そして、 「バンドはアカーシャで最後にするわ・・・」 と、鈴さんは静かに呟いた。 それが、相方に出会えた結果であり、 その考え方に俺は 一切の違和感を感じなかった。 「俺は、真剣にやるなら完全にビジネスの付き合いにするべきだと思ってきたんですよ。けど七瀬さんって、基本的にユルいでしょ・・・優しいし。なんか、ほだされるというか、妙に甘えてしまう部分があって・・・いけないと思ってストップかけるのに、お会いした後ですごい癒されてる自分がマジで怖いんです」 少しアルコールが入って 本音が漏れ出した。 「この前、深海の海底まで掴んで来るって仰ってましたけど、本当に、あのデモアルバムも俺が何を描きたいのか当たり前みたいに掴んで歌詞に表して来られます。もし七瀬さんが活動不能になったら、次に自分が何やればいいか分からなくなる気がする・・・」 ああ。 そんな事を俺は感じてたのか・・・ もし彼女がいなくなった時の 真っ暗になるイメージが 自分の心を捕らえていたのだ。 「・・・頼ってた光がなくなった時、どうすれば立ち上がれるか、今のうちに考えとかないと・・・」
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