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あんな事があっても、私達の間には、『付き合おう』という言葉はなかった。
私も琉斗が言ってくれるものだと思っていたし、琉斗も私が言うものだと思っているらしい。
二人の間には、どっちがその言葉を言うか、緊迫した日々を送っていた。
そんな時間の中で、私達は春休みを迎えた。
「今年から受験生か。」
「琉斗は、どこの大学受けるの?」
「ひなりと同じ大学。」
「私だって、琉斗と同じ大学受けるよ。」
私達の間には、違う時間なんて、流れていなかった。
「あーあ。そろそろ、区切りつけないとな。」
「区切り?」
すると琉斗は、私の目の前で、大きく息を吸った。
「ひなり。俺と付き合わないか?」
こんな真剣な表情、初めて見た。
「どうしたの?急に。」
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