取材先での不思議な出来事

3/6
前へ
/6ページ
次へ
経営者が三か月と持たずに次々と変わる居抜きの店舗。 青い鳥居を持つ神社。天狗伝承のあるお寺。幽霊の腰掛け石。 この龍門の滝は、五番目に訪れた場所だった。 那須烏山市を流れる那賀川。そこに合流する江川にかかる高さ20メートル、幅65メートルに及ぶ大きな滝なのだが、私はこの日まで存在をまったく知らなかった。 龍門の滝については、こんな伝承がある。 この滝の中段には直径4メートルにもなる「男釜」と直径2メートルの「女釜」と呼ばれる滝壺があり、そこにはこの滝の主である「龍」が住んでいると言われていた。 この「龍」の姿を一目見たいと思った滝近くの大平寺の住職が、滝上の大岩に祭壇を作ってそこに座り、「もしもこの滝に主がいるならば、その姿を現したまえ」と二十一日もの間一心不乱に祈祷を行った。 すると満願の日、晴れていた空は黒雲に覆われ嵐が吹き荒れると、男釜から巨大な龍が現れて、火炎を吐き火の玉のような眼を輝かせながら、驚く住職を尻目に太平寺を目指して這い上がり、仁王門に七巻半ほど巻き付いた。 それからこの滝を「龍門の滝」と呼ぶようになったそうである。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加