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無表情の裏側
「なんだ。会えなかったのか、残念」
翌日。学校の教室内。
森谷に手土産はどうなったかと訊かれ、娘の棚田さんにではなくお父さんの方に渡したと端的に話すと、隣の席の机に寄り掛かっている森谷はガクッと前に項垂れた。
お隣の棚田さんと俺が会えなかったからと言って、何で森谷が残念がるのか意味が分からないし、第一話の内容はそこじゃなかった筈だけど。
「姿だけは一瞬見えた」
「うっそ、本当?」
「嘘じゃない。ついても意味ないだろ」
「 へ〜、そうなんだ」
ニヤリと、何やら口角を吊り上げる森谷。
その笑みに一瞬背筋がゾッとした。
「何? 気色悪いんだけど……」
「いや、何かワクワクすんなー、と思って」
「……あ、そう。そりゃ良かった」
けどワクワクって……何が。
そう疑問に思った瞬間だ。
「ていうか早見……」
気色悪いって何だよ、と森谷に軽くヘッドロックを掛けられた。すると今度はそこへ。
「ほんとー仲良いね」
と、女の声が割り込んできた。
聞き慣れた声に振り向けば、そこには案の定、小野寺が立っていて。
俺と森谷を交互に見やっては、首を傾けて、ニッと笑った。
「まさか……出来てたりして」
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