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「どうしようって俺に言われても」
「そうよねぇ」
はぁ……、と母さんが嘆くように溜め息を吐くので、俺はついにいたたまれなくなり口を開く。
正直、面倒だから言わないでおこうかと思ったけれど。
「……娘さんなら、朝か夜は居るらしいけど」と顔を合わせず言って、トーストをかじる。
母さんは「あら、そうなの?」と、明るく声高に言った。
リビングの壁際にあるテレビでは、日曜日の朝ということもあり、大して興味もそそられない番組が流れている。
俺からは見えない位置にある為、テレビの中の人の声だけが耳に届く。
「そう言えばさ……」
「うん?」
ふいにある事を思い出して手を止めると、母さんもそれに同調するかのように、コップをテーブルに置いた。
「桜井さんに、自慢の息子だとか、言った?」
「サクライさん? ああ、お隣のお隣の桜井さんね。奥さんにたしかに言ったけど、まずかった?」
「いや……」
自ら話を切り出しておきながら、コテンと首を傾げる母さんの目をしっかり見る事が出来ず、視線を逸らす。
まずいっていうか……。
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