プロローグ

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  高校が春休みの間に女手一つで俺を育ててくれている母と、母の生まれ育った町へ越すことになり、無事に引っ越しが終わったのはつい昨日の事。 三階建の古いアパートからマンションになって、窓から見える町並みはガラリと変わったけれども。 他にこれといって変わったところは無く、ウキウキやワクワクといった感じはまったく無い。 ただ新居は以前住んでいた場所からわりと近く、向こうの友人とも遊ぼうと思ったらいつでも遊べるし、高校は変わらずそのままで居られるし、むしろ前より近くなってラッキーだと思う。 小包を元あった場所に置き、今度は冷蔵庫へ向かって、真ん中から開くタイプの扉を開けた。 なんて言うんだっけ。この扉。 たしか、カンノンなんとかって母さんが言ってたな。 『いい機会だし』とかなんとか、母さんが調子いいこと言って、高いのにわざわざ買い替えた冷蔵庫。 扉の内側には調味料や、牛乳やお茶等の飲み物が並んでいるのに対し、棚にはグラタン皿とポテトサラダの入ったタッパが目立つ所にあるくらいで中はほとんど空だ。
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