プロローグ

4/4
26人が本棚に入れています
本棚に追加
/42ページ
  まあ、当たり前と言えば当たり前か。 昨日は朝からバタバタで、とりあえず必要な分しか買ってこなかったって言ってたし。 老人ホームで常勤の看護師として働いている母は、隙間時間に作り置きおかずを作っては、冷蔵庫にストックしてくれていたりする。 引っ越しの為に有給を取ったらしいけれど、今日から明日の朝まで用事で帰ってこないからか、仕事がある日と同じように、夜食を用意してくれたみたいだ。 リビングから6畳ほどの洋室へ戻ると、リフォーム後特有のものなのか、中はまだ独特の匂いが立ち込めていた。 一通り荷物を出し終えて、母によって綺麗に整理されたリビングとは違い、適当に隅っこに置いた私物や、開けてすらいない段ボールがあるのを見て途方にくれる。 荷造りもギリギリでし始めたくらい、基本面倒くさがりだから、片付けも出来ればやりたくない。 て言っても、やるしかないけど。 片付けよりも先ず、部屋の匂いをどうしにかしようとベランダの窓を開け放つ。 その向こうには、サラサラと流れていく川と、それから桜並木が近くに見えて、来週から学校か……、なんてぼんやり思った。
/42ページ

最初のコメントを投稿しよう!