無表情の裏側

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  机に両手をついて、尚も食い下がる小野寺。 「トイレ。行ってくる」 ――ガタリと音を立ててイスを引き、立ち上がる。 小野寺の執拗さにはついに我慢の限界がきて。 「あー俺も」 そう言って後を着いてきた森谷と、小野寺を残して教室を出た。 「なあ早見、トイレっての嘘だろ。しつこくて嫌なのは分かるけど、態度に出過ぎじゃね?」 数歩進んだ所で俺の隣に並び、頭の後ろで手を組む横顔を一瞥する。 「あれでもまだ出してない方だと思うけど」 「え……、あれで?」 「あれで」 マジか、と呟いた森谷は続けた。 「まあ、グイグイくる小野寺も小野寺だけど……。もうこの際はっきり言ってやったら?」 その言葉に俺は足を止めて、森谷の方を向く。 「……何を?」 「好きじゃないから寄ってくんのは止めてくれって。小野寺が早見に好意持ってんのいつまでも知らないフリしてないで、はっきり言ってやんないと、小野寺も分かんないじゃねーの?」 同じく足を止めた森谷は両腕を下ろして言った。いつになく、真剣な顔つきで。 事情を知っている親友だからこそ、こうして話せているわけだけれど。 それは、俺を心配してのアドバイスなのか。 それとも小野寺の為を思って言っているのか。 あるいはその両方か。
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