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はっきり言えたなら、どれだけ楽だろう。小野寺は好意があることを匂わせてくるだけで、はっきり『好き』だと言われたわけではないのに。
「言ってもし勘違いだったらどうすんの？ 本人からそう言われたなら、まだしも。俺が恥掻くだけっしょ、そんなの」
そう言うと、森谷は静止した。
「あー……確かに」
やっぱり。そこまで考えてなかったらしい。
まあ適当にあしらっていれば、その内に小野寺の熱も冷めるだろう。
もう考えるのも面倒なので、そういうことにしておく。
「どうも」
「……どうも」
学校から帰ってくると、偶然にもマンションのエレベーターの前で彼女と出くわした。
横から声を掛けた際、振り向いた棚田さんは特に驚きもせず、軽く頭を下げた。顔には無表情を貼り付けて。
エレベーターの、階数を表すランプが規則正しく下りていく。
「エレベーター待ち？」
「……そうですけど、それ以外に何が？」
無言が痛く話題を振れば、とびきりの塩対応を食らう。
脳内で、当たり前だろ、とバカな俺が囁く。
「確かに、それ以外無いか」
苦笑する俺への返事の代わりか、すっと顔を逸らされてしまった。
その時エレベーターが１階に到着し、開かれたドアから棚田さんが先に中へと入る。
「乗らないんですか？」
「いや、乗るよ。ありがと」
開閉ボタンの『開』を押して待ってくれていたので、続けてさっと乗り込んだ。
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