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兄弟なのだと―― 思った。
他へ向けてけして出さない二人の険しさに。互いだからこそに見せ合う表情に。
「莉緒、話がしたい」
悠に逢いたかった。だけど頷けない。
心に躊躇いが生まれていた。改めて確認してしまった事実に胸が掴まれて傷い。
二人を前にして、声が色を失くしていく。立ち竦んでしまったわたしの手を、悠が握り締めた。
「莉緒は連れて行く」
悠馬さんに向けられた、悠の迷いも無い声が響く。
「蹴り付けたんだ? 舞坂先生と」
あぁ、悠が頷く。
『わたしに下さったお礼よ』
舞坂沙耶の歪んだ微笑みが思い出される。
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