躊躇いの行方

5/14
前へ
/123ページ
次へ
 罪と罰があるなら。  きっとこれは罪だ――   莉緒―― 名前を呼ばれた。腕を掴んで引き寄せられて、黙ったままの時間がまた過ぎて行く。  わたしの部屋に、悠がいる。  悠はソファに座らずにその下に背をもたれて。わたしはただ、悠の胸に背を抱かれて。両腕を包み込む悠の体温だけを感じてた。    「もう、大きい仕事は済んだんだ」  わたしの肩越しから、悠の声が囁きの様に聞こえだす。静かに、ゆっくりと。 「もう―― 何も心配はいらない」  舞坂沙耶のことだ。彼女の顔が浮かんでは消える。 「新作も無事に出版した。担当も替えて貰った。前の様な真似はしない」 悠の言葉に、何かが引っ掛かった。
/123ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1639人が本棚に入れています
本棚に追加