躊躇いの行方

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前の様な……? 思い出される記憶。 「悠、もしかしたら前……っ」 背後から抱きしめるその顔を振り返った。 「海に行った日、急に帰ったのって……」    海の帰り二人で過ごしたホテルの部屋。抱き締め合う時間を壊すみたいに、鳴り響き続けた携帯電話。 「急に呼び付けられた。それ以外、何も無い」 悠は小さく横に顔を振った。  でも。キスされてたよ、悠―― 彼女から送り付けられて来た画像、彼女の台詞全部、悠への想いが怖いくらいに伝わってきてたよ。 「二度は言わない」 サラサラした髪が揺れる。 「俺を信じなよ、莉緒」 傾げたその顔が近付く。  唇がふれてしまいそうな僅かな距離で、見詰め合った。
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