躊躇いの行方

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 悠が愛しむように髪を撫でる。何度も唇を重ね合わす。身体が感じるところに指がふれる。    もう全部を受け入れられる―― きっと。 「悠……?」   わたしを抱く手が止まった。 「誰を見てる?」 たった数十センチの距離。悠の表情が苦痛に歪む。 「俺を見てる――?」 悠の瞳に浮かぶ、やるせない眼差しが向く。見詰め合い黙り合う。  身体を抱き起こして、わたしをぎゅっと抱き締める。  抱いていたその時間よりも、優しい手が身体を包み込む。 「ずっと好きだったんだ。莉緒」 肩越しに聴こえてくる声。 「悠」 見つめた先の、悠の微笑みが哀しく見えた。
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