躊躇いの行方

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 抱きしめたまま、わたしの肩に顔を伏せた悠の表情が見えなくて、言葉を失くした。  見透かされていたんだ、全部。   「気付いたら惚れてた」  ん……  「気付いたら…… 悠馬に持ってかれてた」  知らなかったよ。愛した人が双子だったなんて。 「やっと」 悠がようやく、わたしの肩から顔を上げた。見詰める表情が見える。 「手に入れたつもりだったんだけどな」 そっと頭を撫でて、その手の平が頬を包む。    瞳にはもう哀しみじゃなく、愛しむ優しさが滲んでた。
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