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どうして? 悠はそれで平気なの?
躊躇って手を振り払おうとした。
「最後くらい、かっこつけさせてよ」
俺ずっと恰好悪かったよな、って。悠が笑った。
引っ張られる様にして、悠の車に乗せられて、ただ静かに運転している悠の横にいた。
あの日に二人を間違えていなかったら。こんなに苦しい気持ちなんて知らなくてすんだのに。
外灯が立ち並ぶ車道で車が停まった。
「莉緒」
わたしを降ろしに悠が助手席側のドアを開けに来る。
「行っといで」
精一杯にきっと、笑ってくれている。
「ほら」
差し出された手が、わたしの手を引っ張った。
最後にふれた手のあたたかさを、きっと忘れない。
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