出逢い

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出逢い

 もうすぐ学生時代が終わる。あと半年もしたら、卒業をして社会人になる。    寒くなってきたな。かじかんだ指に息を吹き掛けて、アルバイト先まで急ぐ。ぎりぎりまでバイトは続けて、春になったら就職先でがんばって行く予定。  どうして? きちんと準備しなくちゃ。短大の友達には言われたけど、理由があるの。  逢いたい人がいるの。  その日も、夕方からのシフトだった。 「あらあ、莉緒ちゃん。早いわねえ」  裏口から従業員用のロッカールームへ。ここで着替えと、簡単な休憩が出来る。 「洋子さんも、お早いですね」   既に白シャツに黒いロングタイトのスカートに履き替えて、あとはベストを着るだけ。  カフェバー・〔Moon〕の制服だ。  早く来てしまうのは、逢いたい人がいつ来るのかがわからないから。夕方はカフェが中心で、夜はバーも兼ねて営業してるお店で、逢いたい彼はバーの常連客なのだけど。たまに、時間がすれ違って会えないことがある。  「マスターおはようございます」  厨房からカウンターへの出入口で、お客様の前に立つマスターに挨拶をする。マスターとはいっても、たぶん一回も歳が違わなく見える。 「おはよう。今日も宜しく」     
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