1626人が本棚に入れています
本棚に追加
/123ページ
出逢い
もうすぐ学生時代が終わる。あと半年もしたら、卒業をして社会人になる。
寒くなってきたな。かじかんだ指に息を吹き掛けて、アルバイト先まで急ぐ。ぎりぎりまでバイトは続けて、春になったら就職先でがんばって行く予定。
どうして? きちんと準備しなくちゃ。短大の友達には言われたけど、理由があるの。
逢いたい人がいるの。
その日も、夕方からのシフトだった。
「あらあ、莉緒ちゃん。早いわねえ」
裏口から従業員用のロッカールームへ。ここで着替えと、簡単な休憩が出来る。
「洋子さんも、お早いですね」
既に白シャツに黒いロングタイトのスカートに履き替えて、あとはベストを着るだけ。
カフェバー・〔Moon〕の制服だ。
早く来てしまうのは、逢いたい人がいつ来るのかがわからないから。夕方はカフェが中心で、夜はバーも兼ねて営業してるお店で、逢いたい彼はバーの常連客なのだけど。たまに、時間がすれ違って会えないことがある。
「マスターおはようございます」
厨房からカウンターへの出入口で、お客様の前に立つマスターに挨拶をする。マスターとはいっても、たぶん一回も歳が違わなく見える。
「おはよう。今日も宜しく」
最初のコメントを投稿しよう!