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様子を見守っていたら、不意に佐伯先生がこちらを見た。口元が何かを呟いているけど、なんだろう。
う、ウィンクっ。様になり過ぎて、素敵すぎるけどっ。びっくりした。佐伯先生の肩が揺れている。笑いをこらえているみたい。
この先生は、侮れないわ。さすがに恋愛小説の作家先生。
妙な関心をしていたら、佐川店長に呼ばれた。
「在庫補充、行ってもらえる?」
想定していたより、本の売れ行きが早いらしい。
「あちらの営業書店から、持って来ていますから」
悠斗さん達にも報告すべきところだったのだけど、二人共に姿が見えない。
追加発注までかけていたのに。念の為、営業車で来ていてよかった。
従業員用のエレベーターから、地下まで下る。通路をすり抜けて、関係者用の駐車場まで急ぐ。
ホワイトバンのバッグドアを開いて、中へと上がり込む。ダンボールで男性社員に積み込んでもらったけど。これ重たい。
動かない。
台車を借りてくるべきだったなあ。どうしよう。
開いていたドアから、声がかかる。
「どうしたの?」
乗り込んで来たのは…… 悠斗、さん?
「運び出せなくて」
上着を着てない。せめて髪型が違ったら、迷わないのに。
「手伝うよ」
わたしの手をどかして、ダンボールを車の端まで移動する。
「ありがとう」
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