唯一の人

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 注文したカクテルが運び込まれてから。思い切って切り出してみる。 「二年前に、此処に来てたのは悠馬さん?」 横顔はあの日と同じだったけど。  悠馬さんは、なんだろう、すごく優しい眼差しでわたしを見て。それから答えた。 「二人共だよ。俺も悠斗も来てた」 混乱する。二人共…… 来ていたの? 「和真さんが悪いよな。俺等二人共、悠って呼ぶから」 苦笑いをして、カクテルに口をつける。  あの日の悠さんは?   「わたしが…… トラブルに巻き込まれた日は?」 ケンカの巻き添えで、殴られてしまった日。あの日の悠さんは?    「あの日は――」 言いかけて、わたしを見て。その手が頭の上でポンポンっておかれた。 「莉緒が好きだよ」 おっきな手の平が、髪の背を撫でる。 「あの日は悠斗だよ、莉緒」  悠斗さん、だった。やっとわかった。だけど、悠馬さんの言葉が心に引っ掛かる。  逢いたくて焦がれた人―― 「あとは本人から聞きなよ」 え? 悠馬さんが席を立つ。後ろを振り返ると、すぐ後ろに悠斗さんが来ていた。  またね、って。悠馬さんは背を向けて歩いて行く。聞かなくちゃいけない事、聞けないまま。  悠斗さんが入れ違いに隣へ腰掛ける。ほんとうにそっくりな二人。横顔もまるで同じ。     
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