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微笑みが歪んでいる――
後退りをしてしまう笑みをわたしは初めて見た。
「貴方に」
舞坂沙耶が、手にしていた花束をわたしへと差し出す。その瞳は笑みを浮かべながら。
「先生、それはファンの方からの」
悠馬さんがわたしの代わりに彼女へ言ってくれたけれど、彼女は戸惑うわたしの胸に花束を押し付ける。
「これは貴方にお礼よ」
花の匂いが渡された腕の中から僅かにしてきた。白いかすみ草に彩られた花開く赤い薔薇。
「お礼…… ?」
舞坂沙耶の言葉に躊躇った。
「わたしに下さったお礼だわ」
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