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二人の貴方
暑い。こんな炎天下の中、歩いてたら溶けそう。シャツが肌にまとわり付く。汗でベタつくけど、まだまだお仕事中。
今日はあと、営業書店を三ケ所廻って、自分の書店に戻って、まだまだやることはたくさんある。
ショッピングモールの中に、系列の書店が入っている。営業報告書を受取り、店舗内のチェックをしたり、イベントのお手伝いをしたり。時には作家先生のお宅にまで行かされたり。
手に取る本の売上を伸ばす部署に勤務中。
エスカレーターを上がって行く。正面に書店が見えてくる。明るい照明が、気持ち良い。
並びはゲームセンターの隣だけど、明るさが返って際立っていい感じかな。
「こんにちはっ」
ヒョイっ、と横から顔を出したのは、ここの書店のアルバイトさん。
「奈良さん、こんにちは」
活発そうな、二十歳くらいの女の子。いつも髪をひとつに束ねて、にこにこしてる可愛らしい人。
「これ、店長から預かってます」
ファイルと一緒に、茶封筒を手渡される。
「あら。佐川店長、ご不在?」
今日行きます、って連絡しておいたのに。困ったな。
「あ、あとこれ」
奈良さんから、佐川店長からの書き置きされたメモを受取る。携帯に連絡下さればいいのに。
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