二人の貴方

1/13
1625人が本棚に入れています
本棚に追加
/123ページ

二人の貴方

 暑い。こんな炎天下の中、歩いてたら溶けそう。シャツが肌にまとわり付く。汗でベタつくけど、まだまだお仕事中。  今日はあと、営業書店を三ケ所廻って、自分の書店に戻って、まだまだやることはたくさんある。    ショッピングモールの中に、系列の書店が入っている。営業報告書を受取り、店舗内のチェックをしたり、イベントのお手伝いをしたり。時には作家先生のお宅にまで行かされたり。  手に取る本の売上を伸ばす部署に勤務中。  エスカレーターを上がって行く。正面に書店が見えてくる。明るい照明が、気持ち良い。  並びはゲームセンターの隣だけど、明るさが返って際立っていい感じかな。  「こんにちはっ」 ヒョイっ、と横から顔を出したのは、ここの書店のアルバイトさん。 「奈良さん、こんにちは」  活発そうな、二十歳くらいの女の子。いつも髪をひとつに束ねて、にこにこしてる可愛らしい人。 「これ、店長から預かってます」 ファイルと一緒に、茶封筒を手渡される。 「あら。佐川店長、ご不在?」 今日行きます、って連絡しておいたのに。困ったな。 「あ、あとこれ」  奈良さんから、佐川店長からの書き置きされたメモを受取る。携帯に連絡下さればいいのに。     
/123ページ

最初のコメントを投稿しよう!