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嘘と約束
翌日、イベント開催後の報告書作り。これを元に、記事が書かれるわけなのだけど。
サイン会の様子と短いトークショー。佐伯省吾先生のコメントに写真。本の案内。
ん―― こんな感じかなあ。
「あら、佐伯先生?」
隣のデスクから、真矢さんがひょいっと覗き込む。
「いつ見ても素敵な人ねえ」
確かに美形でしたけど。奥深いです、たぶん。いろんな意味で。言葉を呑み込む。
「そうだ、記事ネタいるんでしょう?」
「え? えぇ」
「パーティー来なさいよ。わたしと同伴」
真矢さんが引き出しから、白い封筒を取り出してわたしに見せる。
日時に場所が入った招待状のよう。
「あ、でもわたし」
出版社が催すパーティーなんて。悠斗さんがいるかもしれない、って躊躇われた。
『連絡するから』
昨日聞いたばかりで、まだあれから会ってない。
次の約束も無いのに、別の場所で会っちゃうって、なんとなく気が引ける。
「ホテルの会場でしょ、きっと華やかよ――。
予定入れておいてね」
今週末かあ。いいのかなあ行っても。迷惑に思われたらやだな。
「今週末だから」
決まりねって。にっこり笑顔がわたしに向いた。
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