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「うん、美味い…!」
口の中に拡がったタルトの味は格別だった。苺のみずみずしい食感も、さっぱりめのカスタードも、タルト生地のバターの香りも、全部苺摘の好みの味だっだ。
まさかこれを波旬が作っただなんて。苺摘は波旬が作ったタルトをじっと眺めた。
見た目もツヤツヤしていて綺麗だし、きちんと並べられた苺が宝石みたいに輝いている。見た目も完璧だ、お店に並んでいても違和感がない。
「凄いんだな、波旬って」
そう言って波旬の方を見ると、少し嬉しそうに微笑みながら未だに苺摘にスマホを向けていた。動画でも撮っているんだろうか。恥ずかしいし、やめて欲しいと感じる。少し頬を染めた苺摘を見て、波旬は更に笑みを深めた。
「美味しいのは当たり前。俺が作ったんだから」
ようやくスマホを置いた波旬が、得意げな顔で自分の皿のタルトに口を付けた。
「…タルトが似合うな波旬」
漫画の世界から来たんですか?って感じのビジュアルを持っている波旬は、その姿が様になっている。物を食べていても絵になるなんて、ビジュアルが恵まれているって、羨ましい限りだ。劣等感こそ無いけれど、羨ましいなと思う。
「なんでも似合うよな、俺」
波旬のそれは、普段から周りに肯定してもらえるからこその自信だろう。
家にもお金があって本人にもスペックがあって、全部が羨ましいと感じた。
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