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「…ちご!…いちご!」
誰かの呼ぶ声が聞こえる。ついさっきまで聞いていたような気がする声だ。苺摘は眠気まなこを擦り、抗議した。
「もう少し寝かせてよ…」
「起きないと、そのまま抱くけど」
まだ寝ていたい。そう思ってぐずっていたら、聞き捨てならないワードが聞こえてきた。ゾワっとする。苺摘はガバッと起き上がって声の主に目を向けた。
「え、なに…波旬…どうしたの…?」
そこには、とびきり甘い表情をした波旬が苺摘の傍に腰掛けて、彼を眺めていた。その瞳は何処までも蕩けていて、甘い。
「おはよう、苺」
「んっ、?!」
頬に手を添えられ、ゆっくり唇が近付いてきたと思ったら当たり前のようにキスをされた。何で?どうして?こいつ、どうしちゃったんだ…?苺摘の頭の中はパニックだった。
「は、波旬…?何してんだよ…?!」
動揺が隠せないまま、苺摘は波旬から離れる為に後ずさった。波旬は苺摘の様子を見てくすくすと笑っている。
「何って、俺たち恋人同士だろ?昨日も散々…」
「散々…なに…?」
波旬はにじりにじりと苺摘の所にはって来た。蛇に睨まれたカエルみたいに動けずにじっと波旬の色の揃っていない目を見つめていた。
「愛し合っただろ?」
ベッドサイドまで追い詰められた苺摘は、いとも簡単に波旬に捕まった。ぎゅっと抱き締められ、そのまま口付けられる。
「愛…そんな筈っ、ふっ、んんっ…、?!んっ…!!」
薄く開かれた苺摘の唇に、何の遠慮もなく波旬は舌を割り入れた。
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