魔に魅入られた苺

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「っぷは…!!」  戸惑う苺摘を見て、波旬はくすくすと可笑しそうに笑っている。 「どうしたんだよ、初めてですって感じで純情ぶっちゃって」 「うわ、ちょ、やめろ…!」  逆に純情ぶるって一体何だと困惑した。舌を差し込まれるのなんて、苺摘にとっては初めてだった。昨日、波旬と交わした口付けすらも初めてなのに。苺摘にとってはこれがサードキスだ。前回二回までとは全く違う、濃厚な舌の動きに頭がくらくらした。 「何その目。生意気なんだけど」 「いだいっ、やへろぉ!!」  波旬は苺摘の顔を見て急に不機嫌になってしまった。頬を思いっきり抓った。昨日知り合ったばかりにしては、力加減に遠慮が感じられない。割と本気で痛かった。 「もっと俺に飢えて媚びるべき」 「なにいっへんだ!」  先程から何一つ状況が掴めない。しかし、抵抗をすれば、火に油を注ぐ事になりそうだ。そう思って苺摘は大人しくされるがままになっていた。すると、予想通り波旬は満足げに頷いて、彼のおでこにちゅっとキスをしてから離れた。 「さっさと飯食って店開けるぞ」 「店…?」  苺摘に背を向けて部屋から出ていこうとしていた波旬が、ピタリと止まって振り返った。そしてゆっくりと瞬きをして苺摘に言った。 「俺達の店。どうしたの。おいで、苺。教えてあげるから」  そう言って波旬は苺摘に手を伸ばした。  不審に思って辺りを見渡せば、苺摘は先程までいた波旬の部屋と内装が変わっている事に気がついた。少し、部屋が狭い。  本気でよく分からない。もしかしたらここは夢の中かもしれない。…従う他に選択肢は無さそうだ。苺摘はベッドから降りて波旬の元に向かった。
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