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「なぁ、俺とお前って…」
「んだよ」
本当に自分たちは店を開いていたらしい。二人が経営していたのは、シンプルな作りのケーキ屋だった。
波旬に手取り腰取り教えて貰い、なんとかお店を開店させられた。お客さんもそこそこ出入りしているみたいで関心する。確かに波旬の作るタルトは見た目も味もしっかりしている。それは昨日苺摘自身も知ったばかりだ。
それにしても違和感がある。
苺摘はまた自分のほっぺを抓ってみた。
「いだい」
「…苺、お前はバカなのか?」
夢なんじゃないかって思ってたのに、ここは何処までも現実だ。頬も痛ければ、視界もクリアで不思議だと感じる。
「頬を抓ったのなら、手ちゃんと洗えよ」
食べ物を取り扱っているだけあって衛生面はしっかりしているらしい。苺摘の頬を労る事なく波旬はそう言った。
でもこれはさり気なく確認するチャンスだ。苺摘は波旬にとあるワードを入れて言葉を返した。
「それが恋人に言うセリフか」
「客商売舐めてんじゃねぇぞ」
現実の波旬とは大違いだ。客商売とか言う有り得なさそうな単語が聞こえてきた。何が起きてるんだ。
それに、波旬は恋人というワードを否定しなかった。
(って言うことはつまり、この夢みたいだけど現実っぽいこの世界で俺達は、
恋人同士って事?)
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