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回避方法を教えてください
そして、物語冒頭に戻る。苺摘は意を決してその日のうちに手紙を書き、登校と共に波旬の下駄箱にそれを入れた。
来てくれ、頼むぞ。そう願いながら待っていたので体育館裏に来てくれたまでは完璧なシナリオだった。
しかし、結果はやはり無理があった。
だいぶとち狂った行動を起こした自覚はあるが、それでもやはり、フラレれば落ち込む。
目の前であからさまに不機嫌な顔をする彼を見つめながら、そう言えばと苺摘はとある噂を思い出した。
波旬は自分のファンであるこの学園の男の子達と、関係を持っているらしい。
(コイツは、女の子みたいに可愛い男の子が好きだもんな。俺みたいないかにも男です。って感じの野郎なんか無理だよな…)
もう自分はわけも分からずに死ぬしかない。苺摘は玉砕した心の傷と共に、はぁっとため息を吐いた。
「…だよな。いきなり呼び出してごめんな」
逆に申し訳ない。そう思いながら苺摘は波旬に背を向けた。
しかし、そのまま歩きだそうとすると、後ろから波旬の低めの声が聞こえた。
「待て」
振り返ると、あからさまに不機嫌な波旬の姿が見えた。ヘテロクロミアの瞳が、睨むように細められている。
「別にお前も俺の事好きじゃねーだろ。罰ゲームか何かか?くだらない事で俺の事呼び出してんじゃねぇよ」
波旬はモテる。それに頭も良いらしかった。学園の玄関に貼られる定期テストの順位表に、いつも波旬の名前があるのを苺摘は知っていた。天下無双の存在である波旬は、平民である苺摘に貴重な時間を奪われた事に対して案の定お怒りのようで、声だけでもイライラしているのが伝わってきた。
「いや、もっと命に関わるやつだよ、多分…。ごめんな、怒ってるのも仕方がないよな。サンドバッグも大歓迎だから」
どうせ11日後には俺は死ぬんだ。
唯月は波旬の前で両手を広げた。
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