プロローグ

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プロローグ

 体育館裏。  誰もが連想するであろう告白スポット。  苺摘 廻兎(いづみ かいと)は、そこでとある男を呼び出していた。  夕陽の降りかかる放課後、苺摘の黒髪がそよ風によって揺れている。彼のルビーの瞳は、眼鏡によってフィルターがかけられ、鈍い光を放っていた。  神妙な面持ちで苺摘は言う。 「俺は…波旬の事が、好きだ。付き合って欲しい」  薄く開かれた唇からは、そんな言葉が紡がれていた。  殆ど初対面である彼に、いきなり告白された金髪の男は、少しだけ驚いて目を見開いた後、すぐに真顔に戻って言った。 「俺は別に好きじゃねぇ」  それを聞いた苺摘は硬直する。 (…ですよね)  苺摘も別に彼が好きというわけでは無かった。仕方がなく告白したのだ。  金髪の男は、変態に絡まれましたって顔で彼の事を見ていた。その視線が苺摘にとっては痛かった。とても辛い、居た堪れない。苺摘は気まずそうに視線を下ろした。  特に好きでもない男に、苺摘が告白をしなければいけない状況になったのは、つい先日の事だったーーーーー。
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