Witch Hunt(波旬環視線)

1/9
234人が本棚に入れています
本棚に追加
/79ページ

Witch Hunt(波旬環視線)

 それは前世での記憶の事だ。 「なぁ、波旬。魔女狩りって知ってるか?」 「なにそれ」  いつもの仕事終わり、いつもと変わらない日常。  俺は苺は、夜に床の上で少しだけ遊んだ後、ちょっとしたピロートークをしていた。普段は体力の無い苺は直ぐに寝てしまうのだけど、今回は起きてくれている。ルビー色の瞳が少しだけ情事後の影響で濡れていた。  自分と苺は恋仲だ。  苺はさっき迄の情事が残った倦怠感の見える顔で不安そうな表情を作り、俺の前髪を指で捻っている。 「少し前に隣町で病が蔓延してたろ。その影響で怪しい女の子を魔女扱いして無差別に処刑してるらしい。それも町ぐるみで。誰かのせいにしないと皆心が休まらないんだろうな」 「…馬鹿馬鹿しい」 「それに男も。怪しければ魔女の手下扱いだってさ。何が何だかだよな」  聞いているだけで胸くその悪い話だ。流行病がせっかく落ち着いて来たのに、次は人間の手で人を減らすのかよ。俺はその話を聞いて気分が悪くなった。 「それの影響でこっちも魔女狩りが始まりそうでさ。疑われるのが嫌で逃げてきた奴らが俺達の町に流行病を連れてきたらどうしよう。とか、この町にいる魔女が病を蔓延させたらどうしよう。とか」  苺は心配そうに俺の事を見ている。苺がこの話題を持ってきた理由はなんとなく分かってる。  俺の実家があるのが、その隣町だからだ。  もしかしたら、苺はこの町で魔女狩りが始まった時に、真っ先に俺に矢印が当たるかもしれないと思っているのかもしれない。 「嫌だな、今の町の空気」  苺はそう言って俺の瞼に唇を寄せた。
/79ページ

最初のコメントを投稿しよう!