第3章

12/13
25人が本棚に入れています
本棚に追加
/66ページ
車の着いた先は郊外にある古民家を改造した和食のお店だった。 お座敷にテーブルと椅子があって和洋折衷の不思議な空間。 西村さんが鱸の焼き和膳を頼んだので同じものにした。 「お仕事忙しいですか?」 「…冬だしそうでもないよ。」 「ラインの返し早いですよね?」 「そう?来たら返してるだけだよ。」 …話がなかなか続かない汗 今までデートした人達は自分から話題や質問を振ってくれてそれに答えてる感じだった。 でも対西村さんの場合は自分から話題を提供しなければいけない。 コミュ弱者にはハードル高すぎ…。 何を話していいのか分からなくなり途方に暮れた頃料理が運ばれてきた。 ホッとしながら食べ始める。 (この人とは合わないかもしれない。私にもそれほど興味無さそうだし早めに帰ろう。) 和食店を後にして再びレクサスに乗り込んだ。 西村さんが口を開いた。 「この後どうする?ドライブでも行く?」 「今日はこのまま帰ります。ごちそうさまでした。」 「そっ?じゃ来週の日曜日、映画見に行こうか。」 「えっ?…あっ、はい。」 ドライブを断った手前、映画を断れなくなってしまった。 西村さんはナチュラルに人の心を操る人だったのだ。
/66ページ

最初のコメントを投稿しよう!