第5章

2/13
25人が本棚に入れています
本棚に追加
/66ページ
ある日、インスタに知らないアカウントからコメントが入っていた。 「ヒデには複数の恋人がいます。知ってましたか?」 『猫耳』と名乗るそのアカウントは西村さんのフォロワーの1人だった。顔出しはしてないが食べた物や育ててる花の写真が多い生活系アカウント。過去のコメントを細かく見ていくと西村さんとの会話もあった。 西村さん『昨日はお疲れ』 猫耳『○○市のイケメンに会ってきました((( *艸))』 西村さん『はぁ?ふざけんなw』 明らかに私より彼との距離が近い…。間に割り込めない雰囲気…。 たぶん、亜子のコメントを見て私の存在を知ったのだと思う。 どうしよう…。 なんとなく西村さんには他の女の人の存在は見えていた。しかも猫耳の言うことを信じるとすると1人ではないらしい。 猫耳と連絡を取るべき? 亜子に相談しても早く別れろと言われるだけだ。 西村さんを信じるわけではない。でも別れたくはない。 西村さんが私との関係をどうしたいかが大切なんだ。 私は猫耳にコメントはせず、直接西村さんに電話してみた。 単刀直入に聞く。 「西村さん、猫耳って人と付き合ってるんですか?」 少しの沈黙の後、彼は言った。 「なぜそんな事聞くの?」 「インスタにコメント来ました。他にも恋人がいるって…。」 「猫耳とは昔からの…なんていうか、腐れ縁だよ。付き合ってない。」 「本当に本当?西村さんのこと信じますよ?」 「いいよ。猫耳さんはブロックしなさい。」 どっちかを信じてどっちかを切り捨てるなら選択はひとつだ。 猫耳より西村さんを取る。 「わかった、ブロックするよ。」 愚かだと言われようと後悔はしない……と自分に言い聞かせた。
/66ページ

最初のコメントを投稿しよう!