第5章

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そう思ったのも束の間、お風呂に入っている間にラインが何件か入っていた。 「すぐに連絡してきなさい」 「連絡するように」 「待ってるよ」 今まで私から連絡するばかりで西村さんが自分から連絡してくることなんてなかった。 なんで?今さらすぎる。 画面の右上を押し、『ブロック』する。 怒りと呆れと、もうひとつよく分からない感情が溢れて涙が出てきた。 しばらくしてインスタの通知が来た。 見なくても西村さんからだとわかった。 こっちもブロックしなきゃ。 やった事がある人はわかるかもしれないが『ブロック』はする方もされる方もダメージを受ける。 する方は相手に分かるように相手を拒絶するというストレス。 される方は言わずもがな拒絶を受けるストレス。 これを一日に3度受けたのだ。西村さんはもうさすがにこんな女に未練は無くなるだろう。 これでいいのだ。 なんとか一週間の仕事を終え土曜日の夜、部屋で一人梅酒ソーダを飲みながらゲームをしていた。 ゲームの才能は全くと言っていいほど無かったがとにかく考える時間を減らしたかったのだ。 10時をまわった頃インターホンが鳴った。 こんな時間に連絡もなく来る人は西村さん以外いなかった。 ここが正念場か…。 基本的にM気質の私は断るというのがものすごく苦手だ。だから、西村さんとここまでズルズル来た。 もう、これ以上振り回されたくない。心を強く持つんだ。 自分に言い聞かせながらインターホンの通話ボタンを押す。 「もう、別れるって言いましたよね?」 「めい、ここをあけなさい。」 「いえ、もうホントに無理なんです。京都の件で心が離れました。帰ってください。」 「いいから、あけなさい。顔見て話しよう。」 涙が出てきた。 「いいえ、あけません。迷惑なんです。帰ってください。」 「……。」 しばらくの沈黙。 そしてアパートのドアから西村さんが離れる気配がして車のエンジンが聞こえてきた。
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