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 色々な囁きが漏れ聞こえる中、表情を隠すように俯いた下里は、傍から見ると、まるで名前の通り愁いを帯びて悲しんでいるように見える。  今まで勝利をかみしめていたガリ勉くんは、一瞬で加害者の立場に立たされて、下里にどんな言葉をかけてよいのかも分からず、おろおろする。  下唇を噛みしめて、ようやく顔を上げた下里は、目があって固まったガリ勉くんを、気遣う様におめでとうと告げてから、その場を去った。  シーンと静まり返ったホールから足早に歩き、距離ができると共に、下里は堪えていた感情を解き放った。  ああ、みんなの同情が堪らない!  惨めさを最大限に引き出して味わうためには、観客はなくてはならないスパイスだ!  きっと今日一日は、みんなの視線を背中に感じて、ぞくぞく感を楽しめるだろう。  そのために僕は努力したのだから……。  ここに入って間もなく、首位で合格したという噂の小島に目を付けた。  発表された小テストなどの点数をチェックし、小テストが無い教科は、分からないふりをして小島に質問して彼の理解度を測り、中間テストの合計点を予測した。  さっき成績発表を見た時は、予測より低い小島の点数に驚き、勝ってしまうところだったと頬が引きつったが、それが逆に効果をもたらした。     
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