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ーー寒い。
裂けた魔導服の隙間から入り込む冷たい空気に、目を覚ました。ああ、そうか。私はまた気を失っていたのか。
ーー暗い。
ーー痛い。
ゆっくりと目を開けても何も見えない。やけに目が霞む。ここは薄暗い地下牢で、ろくに食事も水も与えられず、拷問に疲弊した心と体は、物を見る事をやめようとしていた。
痺れる腕を緩めようと、無駄と分かっているのに窮屈に身をよじる。チャリ…と金属的な鎖の音が空間に響き、私はやはり自由になれず、肩が外れそうな、あるいはもう外れているのか、長い間天井から吊るされっぱなしの体の痛みに堪えた。
指先は疼くような痛みがあり、少し鉄の錆びたような匂いもする。爪を剥がされただろうか。なんだかもう、よく覚えていない。
私をこんな目に遭わせた人物の狙いは私の知識だから、顔や頭部、耳といった、脳に近い部分こそ傷つけられる事は無かったが、逆に言えばそれ以外の部位はどうでもいいらしい。
このカビ臭い、太陽の光など届かない地下牢では、何日経ったかなど分かりはしない。時間の感覚が奪われて、あとどれくらい続くのか、終わりの見えない苦痛に、いっそ殺してくれとも思った。
しかしこんな状態になっても、私ーー不死の魔女 ポルポラは、死ぬ事ができないのだ。
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