不死の魔女

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しかしその切なる望みは、簡単に打ち砕かれた。 「実はなかなか口を割ってくれない貴女の為に、ささやかな贈り物を用意したんです」 魔法使いの男は、悪い予感しかしない言葉を口にした。 チャリ…チャリ…と、鎖が床を擦る音が近付いて来た。 連れてこられた生物が果たして何なのか。理解するまでにかなりの時間を要した。目の前の生物は巨大で、松明の灯りで石畳に大きな影を作った。 「ポル…ポラ」 その巨大な生物は、確かにドレイクの声を発した。はっと私は顔を上げて、まさかという思いで必死に目の焦点を回復させる。その目に映ったのは、とても残酷な真実だった。 緑色の鱗に覆われた巨大な爬虫類ーードラゴン。しかしその頭部には、ドレイクの顔。 ーーそんな… 「ドレイク!」 不条理に、思わず叫んだ。手が傷付くのも構わず戒めを解こうとし、鎖はガシャガシャと音を立てた。 「酷い!…何故、こんな…」 「ふうん…いや、この剣士があまりにも煩いので、少し混ぜてみたのです。養殖のドラゴンと。しかし自我を失わないし、失敗でしたね」 男は憎たらしいほど冷静に、ドレイクを合成獣(キメラ)にした経緯を語った。そして甘言を囁く。 「不死の魔女よ。彼を救えるのは、もはや貴女だけだ。貴女が正直に、不死の秘術さえ明かしてくれれば、彼を人間に戻すと約束しますよ」 その甘言はスッと私の心に入り込み、迷いが生じる。明かしてしまおうかーー不死の呪いの秘密を。
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