車好きな少年と、見守る祖父の話。

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祖父が亡くなったあの日から二ヶ月が経った。葬式や遺品の整理に追われる日々と合宿免許が終わり、晴れて僕も運転免許証を手に入れた。ドライバーとしてはまだ未熟だが、今は運転が楽しくて仕方がない。ただ一つ心残りがあるとするならば、祖父を最初に助手席に乗せたかったなということ。ごっこ遊びで終わったあの頃のことを、助手席に乗せた祖父に覚えているか聞きながら温泉なんかに行きたかった。でもまあきっと、祖父は覚えてなさそうだ。 街路樹が赤く染まるのはもうすぐ。僕はいつまでも、優しかった祖父のことを忘れはしないだろう。
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