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穏やかではない
「...鉄兄さん、顔色が悪いんだけど、寝ずに連絡を入れ続けてるの?」
げっそりとした長男の様子に、さすがに心配し始めた桃次郎。
「...だって、紗々から連絡が5日も来てない...。
もしかしたら、何かトラブルでも...。」
過保護な兄に、残念な気持ちが増すばかり。
「...一般的なオメガの発情期は一週間。 それが運命だとしたら、それは前後するっていうだろ? 紗々兄さんは発情期ではなかったかもしれないけど、運命と出会ったその衝動って、本人同士でもわからないっていうじゃん。 まだ、2日ぐらい待つべきだと俺は思うけど...」
鉄次郎は、桃次郎の言葉にぐっと耐えた。
それでも、治まることのない心配は溢れてくる。
鉄次郎は、ふらりと和室に向かい、そこにある場所に座り込んだ。
「...父さん、母さん。 紗々が...紗々が...。
大人になってしまったかもしれない...」
30手前の男、鉄次郎。
涙と鼻水を垂らしながら仏壇に手を合わせながら語っていたのだった。
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